株テーマ:全固体電池の関連銘柄
全固体電池は、可燃性の高い液体電解質を使用せず、固体とすることで発火、液漏れを防ぐ。現在主流のリチウムイオン電池の技術は成熟化しつつあり、2020年代前半にも性能の限界が来ると予測されている。容量を無理に増やせば、燃えたり爆発したりする危険性が高まるため、全固体電池など次世代電池の開発が進められている。
ホンダは、栃木県さくら市に建設した全固体電池のパイロットラインにおいて、2025年1月の稼働を予定する。パイロットラインへの投資額は430億円。今後はパイロットラインにおいて量産プロセスの確立に向けた技術検証を行いながら、バッテリーセルの基本仕様を決定し、2020年代後半に投入する電動モデルへの搭載を目指す。
トヨタ自動車と出光興産は、2023年10月にバッテリーEV用全固体電池の量産実現に向けた協業を開始すると発表した。2027年~2028年の実用化をより確実なものとし、その後の本格量産を目指す。
出光興産は、2021年に年数トン規模の固体電解質の小規模生産実証設備を稼働。2024年には年数百トン規模の大型量産実証を始める計画。2022年6月にはベルギーのUmicoreと正極材料と固体電解質を融合した高性能材料の開発を開始すると発表した。
AGCは、2023年9月に車載用全固体電池向け硫化物固体電解質の新生産技術の開発に成功したと発表した。ガラスと化学の技術を融合させた独自の溶融法を確立し、AGC横浜テクニカルセンターのパイロットラインにおいて技術的な実証に成功したとしている。今後、事業化に向けて生産プロセスや品質改善を進める。
日産自動車は、2024年度までに全固体電池の量産化に向けたパイロットラインを設置。2028年度までの市場投入を目指す。
GSユアサは、次世代電池の全固体電池について2020年代後半にも実用化する方針で、EVなどで使われる大容量高出力の硫化物系全固体電池を開発中。
三井金属は、硫化物系固定電解質を開発した。全固体電池について、三井金属は電解質だけでなく、正極材、負極材も開発し、全ての部材を供給できることを目標としている。最も重点を置くのは自動車向けだが、太陽光発電や風力発電など過酷な環境で設置されている電池としても実用化する方向。負極材については、黒鉛の代わりにシリコンを材料として開発しているようだ。
FDKは、全固体リチウムイオン電池の正極材量として、高エネルギー密度を有する「ピロリン酸コバルトリチウム」を開発。オハラは、ガラスセラミックス素材「LICGC」を活用した独自添加剤を全固体電池向けに開発。日立造船は、2018年度に全固体電池が宇宙分野で実用化され、2020年代後半にEV向けに量産を目指すと表明。2021年末にも国際宇宙ステーションで全固体電池の実証実験をはじめ、人工衛星などへの活用が期待される。。
ニッポン高度紙工業は、固体電解シートと全固体二次電池でサムスン日本研究所と共同で特許出願している。
三桜工業は、自動車用の各種チューブや集合配管などを製造し、国内シェアが約4割を占める独立系自動車部品メーカー。2018年に米ソリッドパワーに出資しており、全固体電池を開発していたが、試作品の段階からEV向け実用化の段階に入る。ソリッドパワーはフォードとも提携しており、ロール・ツー・ロールで生産できる全固体電池も開発している。A123システムズやBMWも出資しており、三桜工業は2000万ドルの資金調達シンジケートに参画していた。
日本電気硝子は、全固体ナトリウムイオン電池の電気抵抗を大幅に減らすことで、実用可能な水準を確認した。負極材の開発を急ぎ、車載用や定置型用途として2025年中の量産化を目指す。日本電気硝子は、結晶化ガラス固体電解質を用いたオール結晶化ガラス全固体ナトリウムイオン二次電池を、世界で初めて開発した。
また、車載用ではなく小型の全固体電池では量産化に向けた動きがある。小型の全固体電池はウエアラブル機器やIoT機器、半導体関連製品向けなどに展開される。
マクセルは、2030年度までに100億円規模の投資を実施し、2030年度の売上高300億円を目指す。マクセルが目指す全固体電池の2030年度想定市場規模は約3000億円で、小型全固体電池は850億円、全固体電池モジュールは1100億円、過酷環境センシング向けなど中型全固体電池は750億円、モビリティAGV向けなど大型全固体電池は500億円としている。
TDKは、全固体電池「セラチャージ」を開発。2024年6月には次世代品として従来品の約100倍のエネルギー密度の全固体電池用材料開発に成功した。ワイヤレスイヤホンや補聴器、スマートウォッチなどのウエアラブルデバイスや既存のコイン電池を代替する製品を目指して開発を進める。
日立造船は、全固体電池「AS-LiB」を開発。2021年2月にはJAXAと宇宙での全固体電池の実用化に向けた実証実験に関する共同研究契約を締結。宇宙空間で利用する設備の小型化や低省電力化、月や火星探査機、月面で活動するモビリティなどでの活用が期待される。2024年2月には半導体装置メーカー向けに1ロット(12個)を受注したと発表した。商業ベースで初の受注。
日本ケミコンは、2021年6月にリチウムイオン電池用導電助剤「NHカーボン」で旭カーボンと量産技術開発・製造で協業。NHカーボンはリチウムイオン電池や全固体電池の正負極に用いることで、電極密度の向上や充放電サイクル寿命を従来比2~3倍向上させる効果があるとしており、マクセルが製品化を目指す硫化物系小型全固体電池への採用が決まっている。
FDKは、世界最高水準の高電圧のSMD対応小型全固体電池「SoLiCell」を開発。2020年12月から生産を開始した。2020年度中に月30万個規模の生産体制を整備し、2022年度に月200万個規模とする計画。
村田製作所はMLCC(積層セラミックスコンデンサ)の技術を活用した全固体電池を開発した。酸化物系固体電解質セラミックスを使用するため、大気に含まれる水分や二酸化炭素とほとんど反応せず、燃えることもない。2020年度下期の量産開始を目指す。
太陽誘電も2019年12月にMLCCの技術を活用した全固体電池を開発。酸化物系固体電解質セラミックスを使った全固体電池で、2020年度中にサンプル出荷を開始し、2021年度中の量産開始を目指す。
日本特殊陶業は非焼結型全固体電池を開発した。実用化されている酸化物系固体電池と比べ最大100倍の容量で、体積エネルギー密度で1リットル当たり300ワット時を達成したという。自動車のECU(電子制御ユニット)のバックアップ用電源などの車載向けの他、煙感知器などのセンサー向け、警報機器向け用途を想定している。宇宙空間での活用では、ispaceが進める民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」に参画し、2022年に月面で世界初となる固体電池の実証実験を行う計画。
○固体電解質
5706三井金属鉱業=全固体電池の無機物系固体電解質材料として有望視されている。
5019出光興産
7004日立造船=ホンダに試作品を供給
○全固体電池対応正極材
・ピロリン酸コバルトリチウム
6955FDK
6702富士通
・錯体水素化物
4182三菱瓦斯化学
○全固体電池対応負極材
5706三井金属鉱業
住友化学は、京都大学と全固体電池の実用化に向けて材料・要素技術の共同開発を行う。2020年4月から2023年3月まで産学共同講座を開設する。