株テーマ:遺伝子治療の関連銘柄

遺伝子治療とは、人の身体に特定の遺伝子を入れ、正常な機能を果たしていない遺伝子の働きを抑制したり、補ったりして正常な機能を回復し、病気を治すもの。遺伝子の欠損が原因の遺伝病を治したり、失われた組織を再生させることが可能という。

遺伝子治療は再生医療と並ぶ次世代医療の柱で、2019年現在の世界で製造販売承認を取得している遺伝子治療薬は10種類で、市場規模は約700億円だが、研究開発が活発化し、2025年には4兆円まで拡大すると予測されている。日本では2014年の改正薬事法で、遺伝子治療の規制緩和が行われ、欧米では10年前後かかる開発期間を数年短縮できるようになった。


協和キリンは、2023年10月に造血幹細胞遺伝子治療の開発・商業化を行う英Orchardを子会社化するための手続きを開始すると発表した。取得価額は573億円。完了は2024年第1四半期を予定する。Orchardが開発した遺伝子治療のアプローチは、患者自身の造血幹細胞の遺伝子を改変し投与することを特徴としており、一度の投与で遺伝性疾患の根本的な原因を治す可能性があるとしている。

タカラバイオと大塚製薬は遺伝子治療薬で共同開発・販売に関する契約を締結。骨膜肉腫と急性リンパ芽白血病で臨床試験を実施している。2021年3月期に承認申請を目指す。タカラバイオは独バイオンテックと、レトロネクチンに関する一連の特許の商業利用許諾とレトロネクチンの供給に関する契約を締結した。レトロネクチンは遺伝子組換えタンパク質で、バイオンテックは開発中の固形がんに対するCAR遺伝子治療薬の製造に使用する。CAR遺伝子治療やTCR遺伝子治療などの遺伝子改変T細胞療法は、標的のがん細胞を選択的に認識・攻撃するもので、世界的に研究開発が進んでいる。

アイロムグループの遺伝子治療薬「虚血肢治療剤」は2022年に上市される予定となっている。虚血肢治療剤は、閉鎖性動脈硬化症や糖尿病など様々な要因を起因とする下肢血行障害の治療薬。日本では2017年11月に「先駆け審査指定制度」に申込。2019年中に中間解析結果により早期製造承認を申請。早期の承認を目指す。

アンジェスと田辺三菱製薬は、糖尿病などが原因で発症する「重症虚血肢」の遺伝子治療薬を発売する。2019年3月に国内条件付承認を取得した。重症の動脈硬化で足の切断にもつながり、国内患者数は15万人と言われる。2019年8月に保険適用が決まり、投与1回の公定価格は60万円とされた。

ナノキャリアは、遺伝子治療薬「VB-111」のプラチナ製剤抵抗性卵巣がんを対象とした国内開発を実施する方針を決定。2024年にも実用化する計画。

アステラス製薬は、X連鎖性ミオチュブラーミオパチー患者を対象とする遺伝子治療薬「AT132」を開発する。2020年1月にはAT132を開発するAudentes社の株式100%を29.73億ドルで取得した。AT132は米国で臨床試験を実施中で、第1/2相臨床開発段階にある。2023年3月期中にも承認申請し、2024年の実用化を目指す。

富士フイルムホールディングスは、遺伝子治療薬の生産設備を増強。また、原薬生産や最終製品に仕上げる製剤の生産が中心だったが、遺伝子治療薬の生産の一括受託を始めるもよう。一括受託で生産プロセスの開発にかかる時間が従来より3~6カ月短くなるという。

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