株テーマ:水素サプライチェーン:30年に供給6倍への関連銘柄
水素は、低炭素社会実現に向けて期待されている一方、価格が高いことが課題となっている。海外からの輸入や水素ステーションの整備による水素の生産量の増加などで価格を下げる取り組みが進んでいる。そこで海外から水素を安く調達する体制の整備を進める水素サプライチェーン関連についてまとめた。
日本とオーストラリア間の水素サプライチェーン関連では、オーストラリアの炭化が不十分で低品質な褐炭をガス化して水素を製造し、その水素を液化して、日本に輸送する実証実験が進む。これにより、水素の価格を大幅に引き下げられる見通しで、輸送した水素は水素ステーションや水素発電に利用される計画。実証実験には、川崎重工業、Jパワー、岩谷産業、丸紅、住友商事などが参加をし、2020年から2021年の間に実施される。川崎重工業は、貯蔵やタンクローリーでの大型運搬をしやすくするための水素液化システムや、水素を貯蔵できる大型タンクの開発、低コストの水素を輸入するための水素運搬船の製造などを行う。
岩谷産業、川崎重工業、関西電力、丸紅と豪州のStanwell、APAは、2021年9月に日豪間の再生可能エネルギー由来の水素サプライチェーン構築に向け事業化調査を実施する覚書を締結。2026年頃に100t/日規模以上、2031年以降に800t/日以上の水素生産規模を目指す。
ENEOSは、2021年8月に豪オリジンと、2021年9月に豪フォーテスキューと日豪間のCO2フリー水素サプライチェーン構築に向け協業検討に関する覚書を締結した。再エネ電力の安定供給やMCHの効率的な製造、日本への海上輸送についての検討を行う。
住友商事とリオティントは、2021年8月に豪クイーンズランド州グラッドストンで推進中のグリーン水素製造プロジェクトで、リオティントのアルミナ精製工場に水素の試験製造プラントを建設し、水素活用について検討するパートナーシップを締結した。プロジェクトが計画通り進んだ場合、製造される水素が住友商事のグラッドストンで推進中の水素エコ構想に向けて供給される。
また、千代田化工建設、三菱商事、三井物産、日本郵船は、4社で共同設立した次世代水素エネルギーチェーン技術研究組合を通じ、水素をメチルシクロヘサキン(MCH)として供給することを目指している。MCHはトルエンと水素から生成され、常温・常圧下では液体の状態で、貯蔵や輸送では石油・石油化学品向けの既存インフラを活用でき、必要な時に水素を取り出す事ができる有機化学品で、水素の需要地と供給地をグローバルで結ぶ大規模な長距離輸送や長期間貯蔵の技術課題を解決する手段の1つとして利用することを目指している。組合はNEDOの助成を受け、2020年にブルネイで製造したMCHを日本に初めて国際輸送し、水素を取り出す実証を完了。その実績を元に、2021年8月にはENEOSが実施する技術実証事業にブルネイで製造するMCHを供給する契約を締結した。
川崎重工業の100%子会社の日本水素とENEOS、岩谷産業は、2021年8月26日、NEDO公募の「グリーンイノベーション基金事業/大規模水素サプライチェーンの構築プロジェクト」に対し、「液化水素サプライチェーンの商用化実証」を提案し、採択されたと発表した。年間数万トン規模の大規模な水素の液化・輸送技術を世界に先駆けて確立し、水素製造・液化・海上輸送・受入まで一貫した国際間の液化水素サプライチェーンの実証を行う。
16万㎥クラスの液化水素タンクを搭載する液化水素運搬船や5万㎥クラスの陸用の液化水素タンクなど、商用化実現を見通すために必要な大型設備を川崎重工が供給。2030年30円/N㎥の水素供給コストの実現を目指す。事業期間は2021年度から2029年度の9年間で、2050年20円/N㎥の水素供給コストを目指す革新的技術開発も含めると、2030年度までの10年間となる。事業規模は約3000億円。
新明和工業は北海道のベンチャー企業のフレイン・エナジーと業務提携し、水素ビジネスに参入する。両社は、2022年8月に水素サプライチェーンを構成する製品の共同開発に関する契約を締結しており、今後は新たな水素供給ユニットとしての販売、量産体制の構築を計画する。