株テーマ:核融合発電の関連銘柄
核融合とは、水素同位体である重水素や三重水素などの原子核を高速で衝突させて合体させ、そのエネルギーを利用する発電方法で、太陽や恒星のエネルギー源である核融合反応を地球上で再現する。
核融合には、次のようなメリットがある。
・燃料が豊富で、地球上に大量に存在する。
・二酸化炭素などの温室効果ガスを排出しない。
・核分裂のように核分裂性物質を必要としない。
現在開発が進んでいる核融合の方式は、「プラズマ磁場閉じ込め方式」と「レーザー核融合方式」の2つだが、どちらも商用化までには様々な課題がある。「プラズマ磁場閉じ込め方式」は巨大なエネルギーを発生させる装置が必要で、莫大な予算が必要。「レーザー核融合方式」は、安定的に発電するには強力なレーザーを連続で照射する技術が必要で、核融合時に中性子が生成され、放射線リスクを避けられない。
国際熱核融合実験炉(ITER)は、2024年7月に部品の不具合などを理由に完成の遅れは8年になると発表し、ITERの完成は早くても2033年になる見通し。
政府は、2022年9月に核融合戦略を検討する有識者会議を設置。研究開発や産業育成方針を議論し、2023年春にもとりまとめる方針。2050年をめどに核融合発電ができる国産実験炉の運転開始を目指す。
米コモンウェルス・フュージョン・システムズ(CFS)は、2030年代前半に商用の核融合プラントの建設を目指す。
大阪大学レーザー科学研究所は、2030年代半ばにもレーザーを使う核融合発電の実証を目指す。
太平洋金属は、2024年10月に核融合スタートアップのMiRESSOと包括的業務提携契約を締結し、核融合事業に本格参入。
みずほフィナンシャルグループは、2024年10月に核融合エネルギー技術開発の米Zap Energyに出資したと発表した。Zap社は米シェブロンや英シェル、ビルゲイツ氏のブレークスルー・エナジー・ベンチャーズなどが出資し、成長が期待される企業。出資を通じて日本企業を紹介し、協業などにつなげたい狙い。
ソフトバンクと伊藤忠商事は、核融合発電の米新興企業であるブルー・レーザー・フュージョン(BLF)に出資した。独自のレーザーを用いて安定した発電を可能にし、2030年をめどに商用化を目指す。
フジクラは、2023年2月に米国で核融合炉の実証に取り組む米CFSにレアアース系高温超電導線材の納入を開始し、将来に向けて生産能力拡大を推進すると発表した。フジクラは、核融合発電向けに比較的高い温度で超電導を実現できる「高温超電導線材」の生産能力を2倍に高める。米CFSは、2030年代前半に初の商用の核融合発電プラントの建設を目指している。
東邦金属は、2023年2月に核融合研究所と黒鉛とモリブデン合金の接合を可能とする新技術開発を行う研究契約を締結。核融合炉の実現に向けた要素研究の過程で必要となる黒鉛を含む様々な炉壁条件を実現するために必要な技術としている。基礎研究を2022年11月に開始し、本格的な実験に向けた準備を行う。核融合科学研究所と共同で、核融合炉への実装を目指した、ダイバータと呼ばれる高い熱負荷に曝される炉内機器の開発を行っている。
三菱重工業と量子科学技術研究開発機構は、2020年1月に核融合実験炉イーター(ITER)のための世界最大規模の超電導コイルであるトロイダル地場コイルを完成させたと発表した。トロイダル地場コイルは高温かつ高密度のプラズマを閉じ込めるために地場を発生させ、核融合の効率を高める役割を果たす。2025年にフランスで運転開始予定のITERに5基のトロイダル地場コイルを出荷する計画。
また、三菱重工業は、2022年7月に量子科学技術研究開発機構六ヶ所研究所に、核融合実験炉「ITER」関連装置を納入した。納入した試験装置は、「大面積高熱負荷試験装置」「高温高圧水噴出・漏洩実験装置」「ベリリウム‐水蒸気反応性データ評価装置」「高温高圧腐食試験ループ」で、核融合炉の内壁を構成するブランケットにおいて、核融合炉から発生する熱の取出しと、燃料である三重水素の生産に必要な機器。
NTTと量子科学技術研究開発機構は、核融合エネルギーの実現に向けた光関連研究開発を国内で立ち上げ。その研究成果をイーター(ITER)計画など世界へ展開する。
助川電気工業は、研究機関向け核融合関連製品が増加。ITER計画と並行して行われているJT-60SA(核融合超電導トカマク型実験装置)の統合試験運転が開始される予定で、今後も関連案件の需要が期待される。
神島化学工業の大型接合セラミックスは、大阪大学や世界中の研究機関が推進している「慣性核融合発電システム」に提供されている。
ジェイテックコーポレーションは、2022年1月にレーザー核融合商用炉の実現を目指すEX-Fusionと技術提携している。
浜松ホトニクスはトヨタとレーザー核融合研究、東洋炭素は核融合炉構造部材を提供している。
INPEXは、核融合発電に参入すると報じられた。京都大学発で世界最先端の炉工学技術を持つ京都フュージョニアリング、レーザー核融合商用炉実現を目指すエクスフュージョン、高温のプラズマを安定的に閉じ込めるヘリカル方式で核融合エネルギーの早期実現を目指すヘリカルヒュージョンの新興3社に出資を検討する。海外企業との資本提携も視野に入れ、最大数百億円を出資するもよう。
古河電気工業は、核融合ベンチャーの英トカマク・エナジーと、先進核融合原型炉のST80-HTSで用いる高温超電導(HTS)線材の供給契約を締結した。英トカマクエナジーの核融合炉向け高温超電導(HTS)線材供給に関して2023年内に増産する。
米エネルギー省が所管するローレンスリバモア国立研究所の研究者が、核融合炉の燃料から投入を上回るエネルギーが出力される状態を初めて達成したと、フィナンシャルタイムズが報じていた。報道通り、米エネルギー省は、実験で核融合を起こすために投入した分を上回るエネルギーを取り出せたと発表した。温室効果ガスが発生しないクリーンな商業用核融合発電の実現に向け画期的な一歩となる可能性がある。
米エネルギー長官が国立研の「重大な科学の画期的成果」としている。まだ基礎的な実験の成功にとどまり、商用化はまだ先だが、今回の成果で投資が集まり実用化が早まることもあり得るとされている。制御された核融合反応からエネルギーを得る初めての事例となり、太陽熱と同じ源からエネルギーを得るという大きな転換点となる。核融合反応を起こした巨大レーザーに投入したエネルギー量の120パーセントのエネルギーを生成したとされており、投入したエネルギーのおよそ3分の2しか得られなかった実験から、飛躍的な進歩となる。
核融合科学研究所は、放射線が出ない核融合反応が世界で初めて実証した。
マイクロ波化学と量子科学技術研究開発機構は、マイクロ波加熱を用いた省エネ・CO2削減精製技術によりベリリウム鉱石の溶解に成功した。核融合炉の燃料の三重水素は、リチウムに中性子を当てて生産するが、より多くの三重水素を生産するためには、中性子を増やす中性子増倍材であるベリリウムが大量に必要となる。核融合発電の実現を加速させる技術として注目される。
核融合発電で、政府系ファンドなど官民16社が京都大学発スタートアップの京都フュージョニアリングに計約100億円出資する、と報じられている。フュージョニアリングは、核融合反応を促す「ジャイロトロン」と呼ばれるプラズマ加熱装置で高い技術力があり、開発では世界でも先行していると言われる。