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    インテルの凋落とTSMCとの合弁による復活の可能性
    かつて半導体業界の覇者として君臨したインテルが、深刻な経営危機に陥っている。2024年7~9月期まで3四半期連続で最終赤字を計上し、大規模なリストラを余儀なくされた同社は、今や台湾TSMCとの合弁による再建を模索する事態にまで追い込まれた。

    ・凋落の原因
    インテルの凋落には、複数の要因が絡み合っている。

    まず、スマートフォン時代の到来に対応できなかったことが挙げられる。2000年代半ばから半導体業界で「水平分業」が主流となる中、インテルは「垂直統合」にこだわり続けた。この結果、モバイルチップ市場でクアルコムアップルに大きく水をあけられることとなった。

    さらに、先端製造プロセスの開発でTSMCに後れを取ったことも致命的だった。TSMCが2nmプロセスの量産に向けて着々と準備を進める一方、インテルは7nmプロセスの量産で躓き、技術的優位性を完全に失った。

    ・TSMCとの合弁構想
    こうした苦境を打開するため、インテルはTSMCとの合弁会社設立を検討しているという。米国政府の後押しもあり、TSMCのエンジニアをインテルの3nm/2nm製造施設に派遣し、ノウハウを提供することで、インテルの製造プロジェクトの実現可能性を高める狙いだ。

    この合弁会社は、TSMCとインテルが共同所有し、TSMCが運営する新しい事業体としてスピンオフされる可能性がある。米国のCHIPS法に基づく資金援助の対象となる可能性もあり、インテルにとっては投資負担の軽減にもつながる。

    ・復活の見通しと業界への影響
    合弁会社設立が実現すれば、インテルにとって大きな転機となる可能性がある。TSMCの技術支援を受けることで3nm/2nmプロセスの立ち上げを加速し、製造能力を向上させることができる。また、チップ設計とプラットフォーム開発に経営資源を集中させることで、競争力の回復を図ることができる。

    一方、ファウンドリ業界の勢力図にも大きな変化をもたらす可能性がある。現在、TSMCが圧倒的な優位性を持つ先端プロセス市場に、インテルが本格的に参入することになれば、サムスン電子にとっては厳しい状況になる。現在、サムスンは独自のEUV技術を駆使して3nmプロセスの量産を開始しているが、TSMC・インテル連合に対抗するためには、さらなる技術革新と価格競争力の強化が求められる。

    ただし、課題も少なくない。合弁会社の運営体制や利益配分、技術と知的財産権の取り扱いなど、TSMCとインテルの間で合意すべき事項は多岐にわたる。また、TSMCにとっては技術流出のリスクも懸念される。

    ・今後の展望
    インテルの復活と、それに伴うファウンドリ業界の再編は、半導体産業全体に大きな影響を与える可能性がある。特に、米中対立が深まる中、米国政府が半導体の国内生産にこだわる姿勢を強めていることから、この動きは地政学的な意味合いも帯びている。

    インテルとTSMCの合弁構想が実現するかどうかは不透明だが、半導体業界の勢力図を塗り替える可能性を秘めた動きとして、今後の展開が注目される。ファウンドリ業界の再編は、ラピダスにも大いに影響する。

株式情報更新 (2月20日)


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