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    半導体業界を揺るがすアーム対クアルコム訴訟の全貌
    (9984)ソフトバンクグループ傘下のアームとクアルコムの法廷闘争が、2024年12月20日、一つの節目を迎えた。デラウエア州連邦地裁の陪審は、クアルコムのライセンス契約違反はなかったと判断した。

    2021年、クアルコムは半導体スタートアップのヌビアを14億ドルで買収。ヌビアはアームから高額なロイヤリティ契約でライセンスを受けていたが、クアルコムは買収後、自社の低額なロイヤリティ契約を適用してヌビアの技術開発を継続した。

    アームは、ヌビア買収後の技術開発には新たな契約が必要とし、契約違反状態で開発された技術の使用停止と破棄を要求した。知的財産権とエコシステムの保護が目的だ。一方のクアルコムは、既存のライセンス契約で開発継続は可能で、ヌビアの技術を利用したCPU開発はアームの技術をわずか1%以下しか使用していないと、主張した。

    クアルコムはアームの最大顧客の一社で、年間約3億ドルのライセンス料を支払っている。この訴訟の結果は、パソコン向け新製品「Snapdragon X」シリーズの販売にも影響を与える可能性があった。

    陪審はヌビアのライセンス契約違反については判断を保留。アームは再審を求める意向を示している。判事は両社に調停を促しており、再審理となった場合でも、どちらの側にも明確な勝利の道筋は見えていない。

    世界トップクラスのテクノロジー企業の多くが、アームとクアルコムの技術に依存しており、アームは今後ライセンス契約の見直しや料金体系の変更を迫られる可能性もある。アームがクアルコムへのライセンス契約を破棄した場合、年間売上高約390億ドル(約5兆9000億円)規模の製品販売に影響する。クアルコムが多額の損害賠償請求に直面する可能性も否定できない。その影響はPCのみならず、スマホ、自動車にも及ぶ。

    争点は、クアルコムがヌビア買収後、より低額なロイヤルティ契約を適用して開発を継続したことによる差額分だ。アームには知的財産保護の強化という錦の御旗があり、簡単には引き下がれない。今後歩み寄りがなければ、独自設計の推進や代替技術への移行が加速する可能性があり、両社に良いことは何もないはずだ。

    ただし、アームが噂されている独自のAI半導体の開発に成功し、量産化にこぎ着けた場合は、クアルコムを切り捨てることも選択肢となる。ソフトバンクグループがオープンAIに出資したことは、そんな妄想を掻き立てる。

株式情報更新 (1月2日)


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