株テーマ:アビガンの関連銘柄
●アビガン(ファビピラビル)関連株
中国政府は新型ウイルス対策として、富士フイルム傘下の富山化学のインフルエンザ治療薬「アビガン」に含まれる「ファビピラビル」を成分とした薬の生産を2月16日に始めた。神奈川県は県内医療機関で「アビガン」の投与を認めるよう国に要請した。藤田医科大病院も診療研究を開始する。「アビガン」は、国が新型インフルエンザに備えて200万人分の在庫を持っている。中国では有効な治療薬として推奨されたが、富士フィルムの特許は切れており、製造は中国の後発医薬品メーカーが担う。
2020年3月28日、安倍首相は新型コロナによる肺炎に対して「アビガンの治療効果が出ている」として、薬事承認を目指し、必要な治験プロセスを開始すると表明した。世界の多くの国から関心が寄せられており、量産も開始する意向。ドイツ政府が大量調達すると報じられ、購入規模は数百万人分とされている。富士フイルムホールディングスは2020年3月31日に「アビガン」の国内臨床第3相試験を開始したと発表した。2020年4月9日には米国で臨床第2相試験を開始すると発表した。
4月2日、デンカは政府の要請を受け「アビガン」の原料となるマロン酸ジエチルを生産すると発表。政府の要請から約6週間で3年間停止していた設備を再稼働させ、経済産業大臣より感謝状を授与された。4月16日にはカネカも原薬を供給することで合意し、7月から供給を開始するとしている。アビガン原材料のビリジンは、広栄化学工業が国内唯一の製造メーカー。
4月18日、日本感染症学会は緊急シンポジウムを開き、「アビガン」を300人の患者に投与した場合、軽症と中等症の患者では約9割、人工呼吸器が必要な重症患者では6割で2週間後に症状の改善が見られたとの報告(藤田医科大学)があった。
4月22日、宇部興産は宇部ケミカル工場内の医薬品工場で、アビガンの原薬主骨格を成す重要な中間体の製造を開始すると発表した。宇部興産は医薬品の原体・中間体製造を手掛けており、平成21年までアビガン中間体の製造を行った実績があるようだ。生産開始は7月で、生産量は非公開としている。
4月23日、製薬会社向け臨床試験支援大手のシミック HDは、「アビガン」の第3相臨床試験のCRO(医薬品開発受託機関)として、モニタリング業務を行っているが、新たにCDMO(医薬品製剤開発および製造受託機関)として、アビガンの製造を支援すると発表した。
4月27日、三谷産業の子会社アクティブファーマが、「アビガン」の原薬製造を富士フイルムから受託したと発表した。アクティブファーマは原薬製造販売会社で、三谷産業と日医工が折半出資で設立した。
安倍首相は4月27日、アビガンについて「すでに2000例以上投与され、症状改善に効果があった」とし、早期の薬事承認に向けて努力すると述べた。
ダイドーケミックスは、2020年5月11日、「アビガン」の中間体の供給を決定したと発表した。富士フイルムからの中間体製造強力要請に対して、設備投資、人員確保などの検討のうえ、6月から製造を開始する。
アビガンの製造過程における原材料として広栄化学工業の「ピリジン」が使用されている。
アビガンは全国407の医療機関が2158人に投与し、藤田医科大学が中間報告を取りまとめ、尿酸値の上昇や肝機能障害はあったものの、予期せぬ副作用はなかった、と発表した。投与開始から14日目には88%の軽症者で症状が改善したが、投与しない患者と比較しておらず、自然治癒した場合もありそうで、科学的に証明できていない。
富士フィルムや藤田医科大学など3機関で治験が続行されており、6月いっぱいは続く見込みで、安倍首相が目指していた5月中の薬事承認は不可能となっている。6月1日、ロシア保健省はアビガンのジェネリック(後発医薬品)に新型コロナ治療薬の暫定承認を与えた。
藤田医科大学がアビガンの特定臨床研究で、通常投与群36名、遅延投与群33名で、統計的有意差は認められないと発表したが、研究責任医師の土井教授は、投与群をさらに大きくすれば有意差が得られる水準とし、投与、非投与で分けた部分で結果を出せたことから「有効な可能性がある」との見方を示した。
藤田医科大学がアビガンの特定臨床研究で、統計的有意差は認められないと発表したあとも、投与群が少ないことが理由で、多ければ有意差が出るとされたことや、東大が急性すい炎などの治療薬「フサン」を、抗インフルエンザ薬の「アビガン」と併用することで、重症者に有効な結果が出たことを発表したことが、期待をつないでいる。東大の別の研究グループは、アビガンの合成中間体の高効率合成法を開発しており、国内安定供給体制の確立への取り組みは変わっていないようだ。
8月7日、フィリピン保健省はアビガンの治験を近く始めると発表した。患者100人分のアビガンを日本が提供する。バングラデシュのベキシムコ製薬はアビガンの後発薬を商品化している。
全国医学部長病院長会議の発表によると、重症者487人に対して治療した結果、死亡例は20.1%で、アビガンの投与例は77.62%となっている。投与した378例のうち275例は軽快に至った。
アビガンを新型コロナ治療薬として、近く製造承認申請すると、日経や朝日が報じている。治験はほぼ完了しており、一定の効果が確認できたとしている。厚労省は迅速に審査する方針で、年内にも承認される可能性がある。
9月23日、国内臨床第3相試験で主要評価項目を達成したと発表した。アビガン投与群で11.9日、プラセボ投与群で14.7日となり、アビガン投与で早期に症状を改善することを確認できたとしている。今後は、試験の詳細なデータ解析や申請に必要な業務を進め、10月中にもアビガンの製造販売承認事項一部変更承認申請を行う予定。
厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症の治療薬候補「アビガン」の製造販売について、「年内に承認の可否を判断する」と、報じている。報道によれば、厚労省の審議会は今月下旬にも開かれる見通しとされている。アビガンは米国でも12月4日に826人を対象とした最終治験が始まっている。治験はカナダのバイオ医薬品企業アピリ・セラピューティクスが実施する。
アビガンの海外展開については中国とロシア以外の全世界で、ドクター・レディーズ・ラボラトリーズとグローバル・レスポンス・エイドに開発製造権が独占的に付与されており、アピリ・セラピューティクスも参画している。治験の初期データは21年前半に発表される見込みで、良好な結果が得られれば、他の地域でも治験を実施する可能性がある。
●10月16日、富士フイルム HDはアビガンの製造販売承認を申請した。9月末までに30万人分のアビガンを確保していると見られ、富士フイルムワコーケミカルで10億円の設備を導入し、11月から本格稼働でさらに10万人分を上乗せする見込み。
●アビガンの物質特許は2019年8月18日で期限切れとなっているが、製法特許は5年間延長され、2024年8月18日まで有効となっている。これは新型インフルを想定したもので、新型コロナ治療薬に特許は及ばず、当初は富士フイルムの収益には貢献しないとみられていた。ところが7月にインドのドクター・レディーズに中国とロシアを除く全世界の製造販売ライセンスを与え、契約一時金や販売ロイヤリティを受けとることが明らかになっている。市場が認知していない特許の存在があるかも知れない。
ドクター・レディーズはインドやクウェートで販売する意向だが、世界的な生産体制を持っており、欧米の事業比率も高い。クウェートでは1000人規模の治験が行われており、新型コロナ感染者が米国に次ぐ二位の737万人となっているインドでは、既に承認されている。アビガンは5月に政府が44カ国に無償供与し、80カ国以上から要請があったようだ。日本の治験データを元に、海外でも承認され、ライセンス契約を取り付ければ、評価はさらに高まる。
提携先の印ドクター・レディーズ・ラボラトリーズなどが、2020年12月、カナダで新型コロナウイルス感染症の治療薬として「アビガン」の緊急使用を申請した。日本の治験データを元にする。アビガンはインドやインドネシアで緊急使用が認められており、中国やロシアでは後発薬が承認されている。カナダで承認されれば、日本でも特例承認の可能性が出てくる。ドクター・レディーズは米国で緊急使用許可を受けたギリアドのレムデシビルでも非独占的ライセンスを締結している。
●2020年10月22日、アビガンの中国展開に向けて中国のCarelinkをパートナー企業に選定したと発表した。Carelinkによる輸入医薬品承認の申請を通じ、アビガンの中国市場への導入を目指す。
●2021年4月21日、新型コロナウイルス感染症患者を対象とした新たな臨床第3相試験を国内で開始したと発表した。2020年12月に政府が承認を見送っていたが、条件を変えて再度実施し、実用化を目指す。