株テーマ:ゲノム編集の関連銘柄

ゲノム編集は最先端の遺伝子改変技術。内閣府の生命倫理専門調査会は、基礎研究に限って、ヒト受精卵のゲノム編集を認めた。特定の能力を高めた人間や、希望通りの容姿が作れるとされており、倫理面での制約は多いが、一方で難病治療への期待も高まっている。基礎研究では受精卵が育つ段階で、遺伝子を観察し、その後は確実に廃棄することが条件。

厚生労働省は、ゲノム編集した食品は、従来の品種改良と同じとして、安全審査なしで届け出による流通を解禁。健康に効果のある野菜や果物の登場が期待されるが、ハウス食品グループ本社など大手は、消費者に受け入れがたいとして、消極的な姿勢をみせている。遺伝子組み換えでは外部の遺伝子を取り入れる手法で安全性に不安があるが、ゲノム編集は対象作物の遺伝子自体を改変するため、安全性が高い。


タカラバイオは2019年12月に新たな研究・製造設備を稼働。再生医療等製品の製造やゲノム編集などの受託サービス・研究開発業務を行う。

ヘリオスは2016年4月、細胞や遺伝子治療を目的としたゲノム編集技術を用いて再生医療品を開発する米ユニバーサルセル社と共同研究契約を締結。ユニバーサルセル社の万能ドナー幹細胞で免疫拒絶反応を抑えたiPS細胞を作成。iPS細胞から分化誘導した細胞で再生医療等製品の開発を目指す。

リプロセルは2018年10月にGenAhead社とiPS細胞ゲノム編集サービスを開始すると発表。リプロセルの独自技術「SNIPER」とGenAheadの高いゲノム編集技術を組み合わせ、高精度のゲノム編集iPS細胞を提供する。

アンジェスは、2019年3月、現在ゲノム編集で課題となっている「オフターゲット効果」の低減化を含む、新たなゲノム編集技術の開発を行っている米Enendo社に投資した。アイロムグループは基盤技術であるセンダイウイルスベクターを用いた方法で、過度な染色体切断を抑える、遺伝子修復操作で使用したベクターを細胞内に残さない、ゲノムにやさしい技術を開発した。また、2020年12月にゲノム編集の米エメンドバイオに270億円を追加出資し、完全子会社化。

アイロムグループは、2019年3月にCRISPR-Css9法の課題を克服する安全なゲノム編集法の新規技術を開発したと発表。2021年9月には日本で特許査定を受けた。新規ゲノム編集技術は、従来のCRISPR-Cas9法をはじめとする染色体切断ではなく、ドナープラスミド切断による置換式遺伝子改変でゲノム編集を行う。染色体切断では染色体に過度な切断をするリスクが指摘されているが、置換式遺伝子改変法では染色体を切断しないことや切断に用いる酵素が1種類で安全性・汎用性が高いとしている。

モダリスは、希少疾患である先天性筋ジストロフィー治療で2022年に臨床試験に入り、2027年にも実用化する計画。異常がある遺伝子と類似する機能を持つ別の遺伝子を代わりに機能させて治療する。

イナリサーチは、2020年11月に中国バイオサイトジェンとゲノム編集マウスモデルの日本での普及を目的に代理店契約を締結。ゲノム編集マウスを作成し、モデル動物を用いた試験の受託や販売を行う。

カネカは、2020年8月にJTの植物のゲノム編集に関する資産を取得すると発表した。ゲノム編集作物の研究開発を加速し、種子企業へのライセンスや作物種子の研究開発受託を強化する。将来的にはゲノム編集作物の種子事業への参入を目指す。


●東大医科研の真下知士教授が、ゲノム編集技術「CRISPR(クリスパー)」などの国産技術を用いて新型コロナウイルスを、PCR法と同等の高感度・高特異性で試験紙で迅速に検出できる微量核酸検出法を開発した。国産ゲノム編集ツールであるCRISPR(/Cas3(クリスパー・キャス3システム)を用いて、「CONAN(コナン)法」と名付けられた。

最短40分間で微量のウイルスRNAを検出し、陽性一致率は90%、陰性一致率は95.3%と精度も高い。毎年流行するインフルエンザA型も検出できることを確認している。米マンモス・バイオサイエンスは、ゲノム編集技術「クリスパー・キャス12」を応用し、遺伝子検査法「DETECTR」による検査薬を、米FDA(食品医薬品局)に新型コロナの診断装置として申請し、緊急使用許可を得ている。

CONAN(コナン)法は栄研化学のLAMP法によってDNAを増幅する技術も取り入れており、純粋な国産技術として、早ければ感染第二波が予想される冬場までに実用化される見込み。簡便で唾液による検査も可能であり、何より専用機器を必要としないことから、空港での検査や競技会場の入場前検査も可能なため、早期実用化が期待される。

2020年のノーベル化学賞の授賞理由となった「クリスパー・キャス9」から発展したゲノム編集技術は、新型コロナウイルス検査でも実用化されており、米マンモス・バイオサイエンスが簡易検査キットを開発している。米シャーロック・バイオサイエンスもFDAから緊急使用許可を取得している。

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