エヌビディアは、2025年2月14日に提出した米国証券取引委員会（SEC）への報告書で、アーム・ホールディングスの保有株式を約44%削減し、2024年12月末時点で110万株としたことを明らかにした。配送ロボットで知られるサーブ・ロボティクスと、サウンドハウンドの持ち株も全て売却した。

具体的な売却理由は公表されていないが、エヌビディアは同時期に中国の自動運転スタートアップであるウィーライドに170万株を新たに投資しており、ポートフォリオの再編や新たな成長分野への資金配分が背景にあると考えられる。

サーブ・ロボティクスは42％、サウンドハウンドは13％下落、アームも3％下落した。170万株を取得したウィーライドは一気に2倍近く上昇した。エヌビディアはベンチャー投資家の一面もあり、ポートフォリオの入れ替えに過剰反応したようだ。

エヌビディアは、2020年9月にソフトバンクグループからアームを400億ドルで買収する計画を発表した。この取引は、エヌビディアのAIコンピューティング技術とアームの広範なエコシステムを融合させ、AI時代の主要なコンピューティング企業を創出することを目的としていた。

しかし、この買収計画は、競争法上の懸念や各国規制当局からの反対に直面した。特に、イギリス政府や米国連邦取引委員会（FTC）などが独占禁止法上の問題を指摘し、2022年2月にエヌビディアはこの買収計画を断念した。

その後、アームは2023年9月にNASDAQで新規株式公開（IPO）を実施し、ソフトバンクグループが約90%の株式を引き続き保有している。エヌビディアは、アームのIPOにおいてアンカー投資家（基礎投資家）として参加することを表明した。

上場に際して、Advanced Micro Devices（AMD）、アップル、ケーデンス、グーグル、インテル、メディアテック、エヌビディア、TSMCなどの主要な半導体・IT企業が上場前に一定額の株式取得を約束する投資家となった。経営難に陥っているインテルは、リストラ中にアーム社の株式（118万株）をすべて売却した。

2025年2月14日の報道によれば、エヌビディアはアームの株式保有数を約44%削減し、2024年12月末時点で110万株とした。エヌビディアは、アームの買収は実現しなかったものの、引き続きアームの技術を活用しており、同社のサーバー向けCPUやAIシステムにアームベースの技術を採用している。

エヌビディアは、アーム株の売却と同時に、中国の自動運転スタートアップであるWeRideに新規投資を行った。これは、エヌビディアがAI分野、特に自動運転技術への注力を強化していることを示している。半導体業界の競争激化や、米中貿易摩擦などの地政学的リスクも、エヌビディアの判断に影響を与えた可能性がある。

アームの中立性と独立性は、同社のビジネスモデルの核心部分だったが、アームは昨年から独自のCPUチップ開発を目指しており、エヌビディアがある程度距離を置く戦略的判断とも考えられる。そんな思惑も頭をよぎるタイミングだったが、大騒ぎする必要もなかろう。