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    AGI・ASIへの投資と市場動向 1990年代のITバブルとAIブームの相似点
    ・1990年代のITバブルとAIブームの相似点
    1994年12月、ネットスケープの登場がインターネット革命の起点となった。以降、マイクロソフトのインターネットエクスプローラとのブラウザ戦争が勃発し、企業や投資家はこぞってインターネット関連企業へ資金を投じた。ナスダック総合指数は2000年3月にピークを迎えたが、その後の急落で「ITバブル崩壊」となった。企業の実態以上に期待が先行し、利益を伴わないビジネスモデルが崩壊したのが要因だ。

    現在の生成AIブームは、2022年11月のChatGPTの発表がトリガーとなっている。この現象は、1990年代のインターネット勃興期と多くの類似点を持つ。現在、生成AI関連企業への投資が急増し、NVIDIA、マイクロソフト、グーグル、アマゾンなどの時価総額が膨れ上がっている。特に、NVIDIAはAI需要の爆発的な増加を受けて株価が過去最高値を更新し続けている。

    ・AGI・ASIの実現と9兆ドル投資の試算
    孫正義氏は、次のステップとしてAGI(汎用人工知能)、さらにASI(超知能人工知能)の実現を強く主張している。彼の試算では、ASIの開発には9兆ドル(約1350兆円)の巨額投資が必要だが、運用開始から1年で回収可能だという。これは、ASIが実用化されれば、人類が生み出してきた付加価値を圧倒的に上回る生産性を持つことを前提としたものだ。

    この投資額は、現在の生成AIに対する資金流入と比べても桁違いだ。例えば、2023年にマイクロソフトはオープンAIへ100億ドル(約15兆円)の追加投資を行い、グーグル(アルファベット)は1兆円規模のAI関連投資を決定した。しかし、9兆ドル規模ともなれば、国家レベルの支援が不可欠となる。

    ・現在の生成AIブームは持続可能か?
    生成AIブームが一過性のものではなく、実際に市場に浸透し続けるには、以下の3つの要因が鍵となる。

    ・ハードウェアとインフラの進化
    現在の生成AIは、GPU(特にNVIDIAのH100)を大量に使用するが、コスト・消費電力の増大が問題になっている。ASIの実現には、新たなハードウェアアーキテクチャが必要不可欠だ。

    AIの収益化モデル
    1990年代のITバブル崩壊の背景には、利益を生まない企業の乱立があった。現在、生成AIも多くの企業が無料・低価格で提供しているが、継続的な収益を生み出せるかは不透明だ。AGI・ASIの研究には膨大なコストがかかるため、収益化モデルの確立が不可欠だ。

    ・規制の影響
    各国政府はAIの安全性や倫理問題を巡り、規制強化を進めている。特にEUのAI法案、アメリカの国家安全保障対策、中国のAI管理政策などが、生成AIの成長スピードに影響を与える可能性が高い。

    ・結論:新たな経済フロンティアか、バブルの再来か
    現在のAIブームは、1990年代のインターネット革命と同様に、大量の資本が流入し、過剰な期待が先行している点で類似している。ただし、今回の違いは、すでにAI技術がさまざまな産業で実用化されており、即時的な収益を生み出していることだ。ネットバブル時代の企業の多くが赤字のまま市場から消えたのとは異なり、NVIDIAやマイクロソフト、グーグルなどは巨額の利益を生み出し続けている。

    しかし、ASIの実現には技術的ブレイクスルーが不可欠であり、その達成時期には不確実性が伴う。もし、ASIが本当に9兆ドル規模の投資で実現し、1年で回収できるとすれば、それは人類史上最大の技術革命となるだろう。一方で、過度な期待が市場に先行し、収益化の道筋が不明確なまま投資が膨らめば、再びバブル崩壊のリスクをはらむ。

    生成AIの未来は、単なる一時的なトレンドか、それとも新たな経済の基盤となるのか。市場は、その分岐点に立っている。

株式情報更新 (2月3日)


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