中国勢はいずれAIで米国を追い上げる。ここで差をつけるために10兆円規模の大型プロジェクトを次々と立ち上げ、当面の優位性を確立するというのがメインシナリオだった。したがって、ソフトバンクグループのスターゲート計画は関連銘柄の株価を押し上げた。

一方でこのような巨額投資によるリターンがいつどれだけ期待出来るのかという疑念があったのも事実だ。一部のヘッジファンドはIT関連株への投資を手控えていたという。

中国のDeepSeekの登場は、AIの技術革新とコスト効率性向上で大きな衝撃となった。数学的推論でOpenAIの最新モデル「o1」と同等性能を持つ大規模言語モデル「DeepSeek-R1」は、従来の教師あり学習を行わず、強化学習だけで複雑な問題を解決するための思考の連鎖を学習するという。

特にMITライセンスの下でオープンソースとして提供されている点が衝撃を与えた。高額なAPI利用料金は必要なく、非常に低コストで提供されている。中国製のオープンソースモデルの普及は国家安全保障上のリスクもあるが、これまで資金面で制約のあった開発者への恩恵は大きい。

オープンソースが主流になると、これまで巨額投資を繰り返してきた先行者メリットが失われる可能性があり、IT関連株がたたき売られたわけだ。米国の対中輸出制限は画期的な進歩を阻止することを目的としたものだが、このような事例があると、トランプ政権の政策にも影響しそうだ。規制緩和の流れが止まらなければ良いが。