米連邦準備制度理事会（FRB）のクック理事は、米経済の現状と金融安定性に関する展望を語った。

2024年の米経済は堅調な成長を遂げた。第3四半期のGDP成長率は年率3.1％に達し、第4四半期も2.5％程度の成長が見込まれている。労働市場も安定しており、失業率は4.2％と依然として低い水準だ。一方で、インフレ率はピーク時の7.2％（2022年6月）から2.4％（2024年11月）にまで低下しているものの、FRBの目標である2％にはわずかに届いていない。

クック理事は、労働参加率の回復や生産性向上が成長を支えていると指摘した。特に、パンデミック後の移民増加や人工知能（AI）など新技術への積極的な投資が生産性を押し上げる要因となっているという。

AIに関しては、金融システムへの応用が進む一方で、誤ったモデルやデータの偏りが市場に不安定要因をもたらす可能性があると警告した。また、サイバー攻撃の増加も大きなリスク要因だ。2022年から2023年にかけて、金融機関を対象とした攻撃は倍増し、第三者プロバイダーの障害が広範囲に波及する可能性があるという。

クック理事の講演は、FRBの政策方針が経済成長と金融安定の両立を目指していることを改めて示す内容だった。AIやサイバーセキュリティといった新たなリスクへの対応が、今後の政策の焦点となりそうだ。