トランプ次期米大統領がNATO加盟国に対し、防衛費をGDP比5%に引き上げるよう要求するという報道が波紋を呼んでいる。日本はNATO加盟国ではないものの、アメリカとの同盟関係を考えれば、この要求が及ぼす影響は無視できない。

日本はこれまで防衛費をGDP比1%前後に抑えてきた歴史がある。その理由は、「専守防衛」の理念と、経済成長を最優先にしてきた戦後の政策だ。しかし、現在の政府は防衛費をGDP比2%に引き上げる計画を進行中で、これでも過去最大の規模だ。

もし仮にトランプ氏の要求を間接的にでも受け入れ、GDP比5%を目指すとなれば、2025年度予算（8兆円超）をさらに倍以上に増額する必要がある。単純計算で防衛費は年間約20兆円に膨れ上がる。これは日本の財政を根本から揺るがす規模だ。

GDP比5%の防衛費は、教育、福祉、インフラといった他分野の予算を圧迫することが避けられない。さらに、増税や国債発行を通じて国民負担が急増する可能性が高い。国防が重要であることは理解されつつも、国民生活への影響は深刻な議論を呼ぶだろう。

一方で、防衛費の大幅な増額が本当に国の安全保障に直結するのか、疑問も残る。日本はアメリカと同盟関係にあるが、地理的には中国やロシアという大国の隣に位置している。防衛費の増額だけではなく、外交努力や多国間協調を通じて地域の安定を確保することも重要だ。

トランプ氏の5%要求は、同盟国の防衛能力を強化しようとするアメリカの思惑を反映している。しかし、日本が目指すべきは、財政や国民生活を守りながら、現実的かつ効果的な安全保障政策を築くことだ。GDP比2%の目標を達成した後、どのように「専守防衛」の理念を維持しつつ防衛力を整備するかが、日本の未来を左右する鍵となるだろう。

日本が抱える課題は、防衛費の規模そのものではなく、それをどう活用し、国益と平和を両立させるかにあると言える。