アームは1990年11月にAdvanced RISC Machines Ltdとして設立された。当初は12人の技術者と1人の経営者で始まった小さな会社だったが、低消費電力技術に特化することで急成長を遂げた。1993年にアップルのNewtonに採用されたのを皮切りに、1997年にはノキアの携帯電話にも採用され、モバイル市場での地位を確立した。

アームの強みは、半導体の設計に特化し、その知的財産権（IP）をライセンス供与するというユニークなビジネスモデルにある。このモデルにより、アームは製造設備への巨額投資を避けつつ、高い利益率を実現している。現在、アームの粗利益率は約95%、営業利益率は42%と極めて高い水準にある。

2016年、ソフトバンクグループの孫正義会長が3兆3000億円でアームを買収。孫氏は「10年来のマドンナ」と呼ぶアームを通じて、AI時代の覇権を狙っている。アームは現在、クラウドやIoT、自動車向けなど事業領域を拡大。特に注力しているのがエッジAIだ。

アームは2025年にAIチップを発売する計画を発表した。2025年春までにAIチップのプロトタイプを構築するための専門ユニットを設立し、同年秋には量産を開始する予定だ。この計画には数百億円規模の初期開発費用がかかると見込まれている。

アームの強みは、1000社以上のライセンス供与先と1500万人のエンジニアからなる巨大なエコシステムだ。「イノベーター」や「AIパートナー」の認定制度を通じ、有望な技術者や企業を積極的に取り込んでいる。

AI時代の到来で、クラウドだけでなくエッジでの情報処理需要が高まると予想される中、アームは次世代のプラットフォーマーとなるべく動き始めている。しかし、NvidiaやGoogleなど既存大手との競争は避けられず、既存事業とのシナジーや巨額投資の回収など、課題も多い。

アームの今後の動向は、半導体業界だけでなく、AI時代のテクノロジー産業全体の行方を占う上で重要な指標となるだろう。